経済混乱覚悟の関税政策、その背景には、歴史的教訓あると僕は思っています。
関税が本来、経済にとっては良いものではないとトランプ大統領も分かっていると思います。
「ディール」の為のカードだと思います。
日本でも、報じられる「フェンタニル」の問題ですが、
日本では、実感は薄いです。
ですが、アメリカでは社会問題となっているようです。
フェンタニルの恐ろしさ
米国で「史上最悪の麻薬危機」として猛威を振るう合成麻薬フェンタニル。
「ゾンビ麻薬」の壊滅的な影響に対し、
ドナルド・トランプ大統領が経済的な混乱をも厭わない関税措置を推進しようとしています。
その背景には、かつて中国を蝕んだアヘン戦争と同じ轍を踏まないという、
トランプ大統領の考えがあるのだと思います。
全米を蝕む「ゾンビ麻薬」フェンタニルの恐ろしさ。
フェンタニルは、本来はがん患者などのための強力な鎮痛薬だが、
闇市場では安価な合成麻薬として出回っている。
摂取すると幻覚症状を引き起こし、
無気力になることから、その異様な姿を「ゾンビ」に例えられ、
「ゾンビ麻薬」とも呼ばれている。
サンフランシスコのテンダーロイン地区では、
その恐ろしさが現実として顕在化している。
調査取材によると、道の至る所で体の奇妙に折れ曲がったフェンタニル中毒者の姿が見られるという。
お尻を丸出しに前かがみに佇む人、白目をむいて上を見上げる人、
さらにはかごに頭を突っ込んだまま動かない人など、
その光景はまさに地獄絵図だ。
ある薬物中毒の男性は、フェンタニルの破壊力をこう語る。
「フェンタニルのせいでたくさんの人が死んでいる。子供や家庭、キャリア、すべてを壊すものだ。体の芯から蝕んでいき、最終的に死んでしまう」。
この強力な薬物はたった5ドル程度で手に入り、
「手のひらに乗せた白い小さな粒だけで30人は殺せる」と話す中毒者もいるほどだ。
その依存性は極めて強く、
この男性はフェンタニルの恐ろしさを語った直後に
「これがフェンタニルだ。殺人鬼だよ」と言いながら、
火をつけて煙を吸う姿を見せ、依存の根深さを浮き彫りにした。
米国社会に与える壊滅的な影響とトランプ大統領の決意
フェンタニルによる過剰摂取死亡者は米国で激増の一途を辿っている。
2016年には約1万8,000人だった過剰摂取死亡者数が、
2021年には約7万人にまで増加。昨年(2022年とみられる)の米国内の薬物中毒死者10万8千人のうち、実に7万4千人がフェンタニルによるものとされている。
特に若年層から現役世代においては、その死因の第1位となっている深刻な状況だ。
こうした壊滅的な状況に対し、トランプ大統領は断固たる姿勢を示している。
トランプ大統領は、フェンタニルによって多くのアメリカ人が殺され、
家族が崩壊している現状を重く見て、
米国にフェンタニルを流入させているとされるメキシコ、カナダ、中国には大幅な追加関税を課すことを宣言している。
これは、たとえ経済に混乱をきたしても、
国家を蝕む麻薬問題を解決するという強い意思の表れに他ならない。
関税措置の背景に歴史からの教訓=現代のアヘン戦争か
現代の麻薬危機と、それに対する経済的圧力としての関税措置という構図は、
19世紀に中国(清)が経験した「アヘン戦争」と同じように思えます。
当時、英国は清との貿易赤字を解消するため、
植民地インドで生産したアヘンを清に密輸し、莫大な利益を得ていた。
清国内ではアヘンが蔓延し、アヘン中毒者が大量に発生。
強い依存性を持つアヘンは、民衆を衰弱させ、社会に混乱をもたらした。
さらに、アヘン購入資金として清国内の銀が海外に大量流出し、
経済活動に深刻な悪影響を与えた。
税金は銀で納められていたため、銀の流出は実質的な増税となり、
民衆を苦しめた。
清政府はアヘン貿易の取り締まりを強化したが、
これに怒った英国は軍事力を行使し、アヘン戦争が勃発。
軍事力に勝る英国が勝利し、清は不平等な南京条約を結ばされることになった。
この条約は香港の割譲や港の開港、巨額の賠償金などを清に強いるもので、
中国が欧米列強の植民地にされる「苦難の歴史」の始まりとなった。
アヘン吸煙の風習は官僚だけでなく民間人にも広がり、
中国は世界最大のアヘン汚染国家に転落した。
アヘン戦争での敗北は、清の知識人たちに西洋の力を思い知らせた一方で、
中国人の心に深い不信感やトラウマを残し、
西洋諸国を陰謀を企てる存在と見なす被害妄想を生む一因となったとも指摘されている。
現代のフェンタニル危機と、トランプ大統領が示唆する関税措置は、
麻薬の蔓延と経済的圧力という点で、
アヘン戦争の歴史的構図と驚くほど類似していると言える。
アヘン戦争が不平等な貿易と麻薬の蔓延によって引き起こされ、
中国に経済的・社会的な大混乱と深いトラウマをもたらしたことを踏まえると、
現代アメリカがフェンタニル危機に対し、
供給元とされる国々への経済的措置(関税)を講じることは、
過去の教訓を意識していると思います。
まとめ
トランプ大統領自身が、
アヘン戦争の歴史をどの程度意識してこの政策を打ち出しているのかは定かではないです。
しかし、アヘン戦争が現代中国人の西洋への不信感や被害者意識に影響を与え続けていると指摘されており、
現代の米中関係がアヘン戦争を原点とする覇権争いと捉えられる側面があることも示唆されている。
現代アメリカのフェンタニル危機と、
それに対する関税措置、そして過去のアヘン戦争の歴史。
これらはそれぞれ異なる時代の出来事だが、
麻薬の蔓延が国家に混乱をもたらし、
経済的な摩擦や不信感を生むという点で、歴史が繰り返されようとしています。
米国が直面する未曾有の麻薬危機に対し、
トランプ大統領が選択しようとしている関税政策は、
単なる経済問題に留まらず、歴史と現代の地政学的緊張が入り混じる
複雑な問題になっています。